サッカーの人達はどんな顔して帰ってくるんだろう

ただ"滅ぼす"、と。
眼前に立ちふさがるものはただ"息の根を止める"、と女はそれだけを行ってきた。
それが強くなる唯一の方法だと信じていた。
結果、女は頂点にたどり着いた。いつしか自分より強いものは居なくなっていた。
怒りがあったわけではない、憎しみがあったわけではない。ただ強さを追い求めて戦っていたら辿り着いてしまったのだ。

そしていつしか女にも愛する男が現れ、そしてその男との間に子供も生まれた。

・・・いつからだろう。闘う事に充実感も達成感も感じなくなったのは。頭に浮かぶのは愛する夫の笑顔と息子の泣き顔だけ。闘っていても女の全身は空虚感に包まれていた。

そして負けた。女は敗北した。
逆らうものは肉を裂き、骨を砕き、眼球を抉り、腸を啜る。常勝不敗、『48k級gの悪魔』と謳われたその女もついに敗北のときが来た。
しかし女は不思議と悔しくはなかった。いや、もはや女の頭の中には闘いの事など粉微塵も残っていなかった。
あるのは四千年の太古より今に生きる大龍の毒気にやられ、もがき苦しむ息子の姿だけ。

その時女はようやく気付いたのだった。
戦士としての私はとうの昔に死んでいるのだ-------と。


ライトノベル風 谷亮子列伝〜